このコーナーでは、過去に発表された「瓜子姫」で印象的なものを紹介し、感想を加えます。
第一回は「うりひめ」(平林英子 文・三国よしお 絵 全日本家庭教育研究会)です。
学習雑誌「ポピー 1年生」の付録である小冊子で、最初の発行年月日は不明ですが、昭和の50年代ごろのようです。
現在も何年に一回か、付録として用いられているようです。

なお、著作権の関係上、挿絵の掲載は見合わせます


(本文)
むかしむかし、おばあさんが川でせんたくをしていました。
すると、そこへはこが二つながれてきました。
おもいはこはこっちへこい。かるいはこはあっちへいけ!
おばあさんが歌うようにいうと、おもいはこがよってきたので、それをひろって、うちへ帰りました。(2ページ)


このあと、箱を開けてみると中には瓜が。そして瓜がわれ、中からかわいい女の子がうまれます。
流れてくるのが瓜ではなく箱で、中に瓜が入っている、というのはたまにある設定です。桃太郎でも、箱の場合もあります。
箱に瓜が入っている、という時点で、「誰かが意図的に流したのでは?」という想像がふくらむ設定、といえましょう。

(おじいさんとおばあさんは、その女の子に「うりひめ」という名前をつけて大切に育てます。美しく働き者の娘に成長したうりひめに、お金持ちの家から縁談が舞い込みます。ふたりはよろこんで、嫁入り道具を買いに行くことに。「悪い女に気をつけろ」と注意し、ふたりはうりひめをのこして町へ出かける)

(本文)
うりひめがはたをおっていますと、わるい女がやってきました。
そして、やさしそうな声でそとからよびかけました。
「こんにちは、うりひめさん。戸をあけけくださいな」
「いいえ、だめです。おばあさんたちが帰ってくるまであけません」(6ページ)

うりひめがいくら断ってもたのむので、うりひめはかわいそうになり、少しだけ戸を開けてしまいます。すると、悪い女は長く伸びた爪で戸をこじ開けてはいってきます。そして、「裏山へ桃を取りに行こう」と、「留守番だから」と、いやがるうりひめをむりやり連れて行きました。
さて、このお話では「あまのじゃく」も代わりに「悪い女」が出てきます。これは、作者の前書きによると、あまのじゃくの行為があまりにも陰惨であるため、平凡な悪女で書き直してみたのだとか。
でも、「悪い女」という表現もすごいな……。

(本文)
「さあ、先に木へのぼって、おいいしのをたくさん食べなさい」
わるい女は、うりひめをだまして木にのぼらせました。
そして、うりひめが高い枝にのぼったのをみて、木をゆすりました。
うりひめは、木からおちて、気をうしなってしまいました。(9ページ)
わるい女は、うりひめのきものをぬがせると、じぶんのきていたきたないきものととりかえました。そして気をうしなっているうりひめを、ももの木へしばりつけ、じぶんはうちへもどりました。
わるい女は、うりひめのふりをして、はたをおっていました。(10ページ)

木から落ちて気をうしなう、というのも、明記はありませんが作者の翻案でしょう。木から落ちる展開の場合、ほとんどの瓜子姫は死んでいますから。
しかし、無理やり連れて行かれたわりに、おとなしく言いなりになって木にのぼるうりひめ。警戒心なさすぎですね。そして、なぜか縛るための縄を用意している悪い女。どうたら、最初から気絶させる作戦だったようです。

(やがておじいさんとおばあさんが帰ってくる。悪い女はおみやげをガツガツと食い、その食べ方をみておばあさんは偽者だと気づく。そのとき、裏山からうりひめの泣き声が聞こえてきて、おばさんは助けにむかい、うりひめを連れてかえる。おじいさんは悪い女をつかまえ、「どうしてこんなことをしたのか」と問い詰める。悪い女は、「自分は不器量でだれもおよめにもらってくれないため、うりひめになりかわってお嫁にいきたかった、と答える)

(本文)
なんとまあ、……まちがったかんがえを……」
おばあさんはわるい女がきていたうりひめのきものをぬがせながらいいました。
「いくらきれいな顔をしていても、どんないいきものをきていても、こころがけがわるちお、だれもおよめにしてはくれませんよ」(14ページ)

そのあと、おじいさんにも諭され、悪い女は反省します。
さて、このお話ではあまのじゃくの役目を担う悪い女の「動機」がはっきりします。
しかし、その割には随分杜撰な犯行ですね。
泣き声が聞こえるような場所にうりひめを縛るあたりが。それ以前に、本気で成り代わるつもりなら、とどめをさせばよかったのに。
作者が、「多少教訓的ではあるが」と述べているように、最後はやたらと説教臭いです。まあ、学習雑誌の付録、という点からすればいたすかたないところでしょうね。

総括
「美しい娘」のわりに、挿絵のうりひめがあまりきれいじゃなかったり、活躍するのはおじいさんとおばあさんで、うりひめはほとんどかつやくせず、というより出番も少なく、ちょうど真ん中あたりで気絶して以降はせりふすらありません。
おそらく、もともとうりひめが死亡する型のお話をもとに翻案したからでしょうね。

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