ウーフメ考

ウーフメ お話はコチラ

鹿児島に伝わる瓜子姫の類話「ウーフメ」。
柿から生まれているのだから、「柿姫」と名づけるかと思いきや、つけられた名前は「ウーフメ」。
鹿児島弁に詳しいわけではないですが、おそらくこれは「瓜姫」の訛と考えてほぼ間違いないでしょう。
おそらく、瓜子姫の話が、話者の好みなどによって、柿から生まれたことに変更されたものの、主人公の名前はそのまま残った、ということでしょうか。
そして、瓜子姫と似て非なるお話が誕生したのです。

このウーフメのお話、他の『瓜子姫』にはまり見られない要素が多くあります。
(なお、私が読んだ再話を元に話をすすめます)

@柿から誕生したこと……これは、後の登場する果物の木が柿であることを考え、話者が改定したものでしょう。

A娘の年齢が明記されている……ほとんどが、瓜子姫の年齢は明記されず、「大きくなった」「成長した」程度で済ませているのに、このお話は「七歳」と明確に規定しています。当時は数えなので、いまの感覚で言えば「五歳」程度でしょう。
多くの話がお嫁入りする程度の年齢に設定しているのに対し、まさに「子ども」として、現代の感覚では「幼児」として設定しているのです。

B悪者はあまんざくめ……これはあまのじゃくの語源となった「天探女」の訛です。これはかえって、元の形にもどった、というべきでしょう。話者が『御伽草紙』を参考にしたのかもしれません。

C悪事の露見……芝居見物に行く途中、ウーフメを縛った木の下を通る、という展開は、多くの『瓜子姫』でも見られる展開です。しかし、この場合、ウーフメがすでに死んでいる、ということが他とは違うところ。ウーフメが叫んで、悪事が露見することはありません。あまんざくめは「上を見ないで」と念を押します。
しかし、ウーフメの血がポタリッ、と。
結構、怖いシーン。幼児であるウーフメの、死しても仕返しをする執念、とでも言いましょうか。

D血に染まる植物……サトウキビの葉、というところが、南国らしいですね。

Eオチ……とくに珍しいのは、死んだウーフメが夢枕に立つところ。そして、「せめてもの孝行に」と、焼き物のつくりかたを教えます。普通なら、「これが○○焼きのはじまりである」となりそうなものですが、そうはならないんですよね、これがまた。
まあ、薩摩焼の豪華な模様は非常に有名ですので「血をつかった焼き物=赤」と「豪華絢爛な焼き物」が結びついたのかもしれないですね。

このように、「ウーフメ」は数ある「瓜子姫」の中でもとくに異彩を放っているのです。


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