瓜子姫と猿

瓜子姫に迫る敵が、あまのじゃくだけではないことは以前にも述べました。(こちら
今回は、以前に言及しなかった「猿」に狙われる瓜子姫について考察を加えたいと思います。

猿に襲われるタイプの話は、四国などに伝わっています。
ストーリーに関しては、あまり語ることはありません。
いわゆる「縛られ型」です。
あまのじゃくが猿にかわっただけです。
(しかし、猿が姫に入れ替わったのに、すぐ気づかないおじいさんとおばあさん。ちょっと、耄碌しすぎでは……)

さて、ここで注目したいのは、猿が最後に退治されている、ということです。

狼に襲われる話では、狼は退治されませんでした−姫は食い殺されているにもかかわらず

しかし猿は、退治されます。−姫は殺されていないにもかかわらず。

この差はなんでしょうか?
それは、当時の狼や猿に関する一般的な認識がおおきいでしょう。

狼は、以前述べたように、危険な猛獣であると同時に、畑を荒らす害獣を駆除してくれる益獣としての側面も持っていました。

一方の猿は、作物を荒らし、保存食を奪っていく、害獣という面しかもっていませんでした。
(事実、日本の昔話には、猿を悪者としてかたる話が非常に多いのです。)

そのため、
狼は「注意はするけれど、積極的に狩はしない」
猿は「積極的に駆除する」

という認識になっていった、というわけです。

そのため、「瓜子姫」に登場する猿も、あっさりと退治されている、というわけです。


現在でも、日本のあらゆるところで猿に関する被害がおこっています。
しかし、「猿を見たらすぐ殺せ」という意見は少数派になっていると思われます。

都会が多くなり、猿と人間との距離が広がったため、昔ほどの緊迫感がないからでしょうか?
動物行動学が発展し、猿を殺さずすむ方法が見つかりつつあるからでしょうか?
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