「瓜子姫とかちかち山の類似性」

「かちかち山」と「瓜子姫」(東北版)は、一部の展開がかなり似通っています。

@外敵が、言葉巧みにAを騙す
AAは外敵により殺害される
B外敵はAを料理して、Aの家族に食わせる
C外敵が「Aの汁はうまかったか?」とあざけりながら逃げ去る

外敵に「狸・あまのじゃく」、Aに「おばあさん・瓜子姫」をいれると、それぞれの物語が完成します。つまり、似ている、というよりも配役を入れ替えただけのおなじ物語なのです。
この同一性に注目したひとは昔も存在したようで、「瓜子姫」と「かちかち山」が一緒になった話、つまり瓜子姫が外敵(狢などに変更されている場合があり)に殺されて、その仇を兎がとる、という展開の話も語られています。
「かちかち山」が有名になったせいか、この話は一部でしか伝わっていないようです。


しかし、実はこの話が「瓜子姫」のスタンダードになったかもしれない、とも考えられるのです。

関敬吾先生などが指摘されているように、「カチカチ山」は、本来異なる三つの話が結合して完成した話である、と考えられています。
その話とは

A、爺が豆まきをしていると、それをじゃましにくる悪狸がいる。爺は、いつも狸が腰掛ける切り株にとりもちを塗りつけ、狸を生け捕ることに成功する。
という、狸退治のお話

B、悪狸が爺に捕まる。狸は、婆をだまして縄をはずしてもらう。婆を手伝うふりをして婆を殺害し、それを汁にする。狸は婆に化け、爺に「狸汁だ」といって汁を食わす。翌日、「婆の汁はうまかったか? 裏の庭にだれかの骨」と言って狸は逃げる。爺は泣く。
という、とにかく報われない話。

C、兎が熊の肉を食おうと考える。柴刈りに熊を誘い、柴に火をつける。次は、火傷の手当てのふりをしてからし入りの味噌を塗りたくる。最後は、泥舟を作らせて、熊を溺死させる。兎は熊を料理して食った。
という、悪賢い兎の話。

これらが結びついて、はげしい復讐のやり取りを繰り返す、「かちかち山」の手に汗にぎるお話が完成するのです。
(ちなみに、元の話ではどう見ても悪だった兎は、完全に善の立場になっています)

もし、この話が完成する前に、「瓜子姫」と結びついていたら?
そして、それがもっと普及していたら?

私達が今知っている話は違っていたでしょう。
いまの「かちかち山」は、存在せず、「瓜子姫」が、いまの「かちかち山」くらいの知名度を誇っていたかもしれないのです。
結びつきそうで、完全に結びつかなかった、不思議な運命といえましょう。

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