「瓜子姫」によく似た世界昔話

世界には、国が違うにも関わらず、にたような話が存在する場合があります。
今回は、「瓜子姫」によく似た話を二編紹介しましょう


なお、あらすじだけのせようか、とも考えましたが、正確をきすため、他のHPから引用させていただくことにしました。


引用元


三つの金のオレンジ   スペインのお話

 昔、小さな王子が泉に石を投げて遊んでいました。そこにラ・モーラというムーア人の女が水汲みにやって来て王子を叱り付けました。けれど王子は石投げを止めず、ついにラ・モーラの水瓶を割ってしまいました。腹を立てた女は王子に言いました。

お前がやがて若者になった時、三つの金のオレンジを見つけるまでは 心安らぐことがないように!

 ラ・モーラは魔力を持った女でした。

 成長すると、王子はラ・モーラの言葉が気になって仕方なくなりました。それでとうとう、三つの金のオレンジを求めて旅に出たのです。

 城から乗って出た白馬はすぐにびっこをひいて使い物にならなくなり、王子は歩いて旅を続けました。長い長い旅の後、黒い山羊を連れた老人に行き会いました。

「どこへ行きなさる? キリスト教徒よ。なにせ、お前さんがここを通るのははじめてじゃからな」

「私は三つの金のオレンジを探しています。もしや、そのありかをご存知ではありませんか?」

「もっと先へ行くがよい。教えてもらえるじゃろう」

 そこで王子が先へ進むと、すぐに、黒い馬を引いた僧侶に出会いました。

「どこへ行きなさる? キリスト教徒よ。なにせ、お前さんがここを通るのははじめてだからな」

「私は三つの金のオレンジを探しています。もしや、そのありかをご存知ではありませんか?」

「お前さんにこの石をやろう。ここから三百歩 歩いたところで、できるだけ遠くへ投げるがよい。石の落ちたところでみつかるはずだ」

 王子が僧に教えられた通りに三百歩進むと、広い谷間に出ました。石を投げると、石は谷川の中に落ちて消えました。しかし、王子は諦めませんでした。服を脱いで川に飛び込みました。

 川の底は美しい庭になっていました。中央に噴水があり、その脇に一本のオレンジの木が植わっていました。枝いっぱいに白い花が咲いて芳香を漂わせていましたが、中に一枝だけ、金色の実が三つ実ったものがありました。

 王子はその枝を折り取りました。――と、足を滑らせて噴水に落ちました。たちまち王子は川の中に戻っていて、岸に這い上がりました。

 

 三つの金のオレンジの実った枝を持って、王子は帰途に就きました。けれど、途中で喉が渇いて死にそうな気分になり、オレンジを一つ食べることにして剣で割りました。途端にオレンジが叫びました。

水を、水を! 水をください!

でないと死んでしまう

 けれども、王子は水を持っていませんでした。それで、そのオレンジは死にました。

 王子は歩きに歩き、一軒の宿屋に着きました。王子はそこで食べ物の他に水を一びん、ぶどう酒を一本買いました。それから宿屋を後にして、また長い旅を続け、涼しい木陰を作っているトネリコの木の下で休み、二つ目のオレンジを割りました。

水を、水を! 水をください!

でないと死んでしまう

 王子は水をかけようとしましたが、間違えてぶどう酒をかけてしまいました。それで、そのオレンジも死にました。

 王子は少し休憩した後、沈んだ気持ちで出発しました。やがて谷間に至り、深い川の流れに突き当りました。王子は川岸に腰を下ろし、三つ目のオレンジを割りました。するとオレンジが叫びました。

水を、水を! 水をください!

でないと死んでしまう

 王子はオレンジを川の水に浸しました。たちまち水の面が泡立ったかと思うと、泡の中から太陽よりも美しい少女が現れました。王子は一目でこの少女に心奪われました。そして少女を連れて旅を続け、最初に着いた村で結婚しました。

 

 二人がこの村で暮らして一年ほどが過ぎ、二人の間には可愛い男の子も産まれていました。そして息子を見るにつけ、王子は自分の父のことを思い出さずにはいられなくなりました。それでとうとう城に帰ることにして、妻と息子を連れて帰還の旅に出ました。

 旅の果てに、夫婦は父の城のある町に着きました。町の門のすぐ側に泉があり、その縁にはカシの木が立っています。王子は妻に言いました。

「この泉のところで待っていておくれ。これから私は父のもとへ行き、我々が結婚したことを告げてこよう。その間そなたの身に間違いのないよう、子供を抱いてこのカシの木の一番下の枝に座っておいで。そうすれば葉の陰に隠れていられるから」

 そして妻はカシの木に登って葉陰に隠れ、王子は城に向かいました。

 王子のいないわずかの隙に、一人の女が泉に水を飲みにやってきました。かつて幼い王子に呪いの言葉をかけた、ラ・モーラでした。ラ・モーラはコップを持っていなかったので、直接水面に口をつけて飲もうとしました。すると、水面にオレンジ娘の美しい顔が映って見えました。

「なんてまぁ、私ったら奇麗だこと!」

 もっとかがみ込んでみると、水に映った顔は今まで見たこともないような美しさです。

「なんて、私ったら奇麗だこと!」

 けれど、三度目にかがみ込んだ時、ラ・モーラはそれが自分の顔ではなく、木の枝に座った女の顔だというのに気付きました。そして無性に悔しくなりました。しかしそれを隠して、猫撫で声で言いました。

「おきれいなお姫様、降りておいでなさい。赤ちゃんを落としたら大変ですよ」

 オレンジ娘は本当に落とすかもしれないと心配になって木から下りてきました。ラ・モーラは赤ん坊やオレンジ娘を散々誉めそやし、おだて、髪の毛がほつれていると言って、直してやるふりをしました。そしていきなり、オレンジ娘の頭に一本のピンを突き刺しました。たちまちオレンジ娘は一羽の鳩になって飛び去りました。ラ・モーラはオレンジ娘そっくりに変身すると、赤ん坊を抱いて木の枝に座りました。

 まもなく、王子が金の馬車に乗って大勢の家来を引き連れて戻ってきました。王子は、偽の妻を木から下ろした時、どこかがいつもと違うような気がしました。

「私には、お前が何だか別人のように見える」

「顔が日に焼けただけでございます」と女は答えました。「旅を終えれば、すぐに元通りになりますわ。さあ、お父様の元に参りましょう」

 こうして王子と偽の妻は城に入り、やがて王が死んで王子が王位を継ぐと、偽の妻は王妃となったのです。

 

 さて、ある朝のこと。城の庭師が働いていると、一羽の鳩がやって来て桜の木の枝に止まり、庭師に尋ねました。

王様の庭師さん

「なんだい? 鳩の娘さん」

王様は、花嫁のラ・モーラと何をなさっておいでなの

「お二人は食べたり飲んだり、ゆっくりくつろいだりなさっておいでだよ」

では、赤ちゃんはどうしているの? どうぞ聞かせて

「赤ん坊は眠ったり泣いたりしているよ」

ああ、ああ、母親を恋しがって泣いているのだわ。

だってその子の母親は、赤ん坊の世話もできないで

丘の上を飛びまわっては泣いているのだもの

 そして鳩は去り、それから毎日やって来ては同じことを聞くようになりました。とうとう庭師はこのことを王様に申し上げました。若い王は、その鳩を捕まえて幼い王子のペットにするようにと命じました。王妃は鳩は果物を食い荒らすから、と殺そうとしましたが、王は許さず、鳩を息子のところに持っていきました。

 小さな王子はその日一日鳩と遊びましたが、夕方になって、鳩が始終足で頭を引っかいているのに気付きました。いかにも頭が気になるようなので王子は鳩の頭を手で探り、ピンが刺さっているのを見つけました。王子がピンを抜くと、鳩は突然、美しい女性に変わりました。王子は驚いて泣き出しましたが、女性は言いました。

「泣くのはおよし、坊や。お母様ですよ」

 そして王子を抱き上げて、いくつもいくつもキスをしました。

 その時 王が部屋に入ってきました。王は一目で本当の妻が分かりました。王は妃をしっかり抱きしめました。そこで妃は、泉のところで待っている間にラ・モーラに魔法をかけられたことを話しました。

 王はラ・モーラを捕らえようと、すぐに兵隊を送りました。これを見るや、ラ・モーラは己を真っ黒いカラスに変え、山を越えて飛んでいきました。けれどもラ・モーラは自分を元に戻す呪文を知りませんでした。ラ・モーラはそのままカラスになってしまいました。

 一方、若い王と妃は、小さな王子と共に末永く幸せに暮らしました。



参考文献
『世界むかし話3 ネコのしっぽ』 木村則子訳 ほるぷ出版 1979.

中近東発祥と言われ、その後、トルコを経てヨーロッパに伝えられ、完成した、とされているお話です。

「嫉妬により娘が他の女性に殺される、というところが(東日本の)瓜子姫にそっくりです。
そして、「鳥」が娘の魂の象徴である、という点も。
おおきな違いは、娘が最後に生き返る、というところと、王子との恋愛が主になっている点でしょうね。


ハイヌレヴェ神話 インドネシアのお話


その頃、世界はまだ、人類の始めに青いバナナから生まれた女神、太母ムルア・サテネに支配されていた。

 セラム島西部のヌヌサク山は人類発祥の地と神話に語られる聖地である。ここに発した九家族が、森の中のタメネ・シワ(九つの祭りの踊りを踊る広場)という神聖な広場に移住してきた。この移住者の中に、アメタ(夜、暗い)という名の独り身の男がいた。

 ある日のこと、アメタは犬を連れ狩りに出た。

 犬は猪を追い詰め、猪は池で溺死した。ところが猪を釣り上げてみると、その牙に見たこともない木の実がついている。その夜、木の実を蛇模様の布で覆って台の上に乗せておくと、夢の中に男が現れて「それを地中に埋めよ」と言った。従って埋めると三日で木になった。それは今で言うココ椰子の木であった。

 更に三日後には花が咲いた。アメタは酒を作ろうと木に登って花を切ろうとし、指を傷つけ血が花にしたたった。アメタは家に帰って指に包帯を巻いた。三日後にまた行くと、血と花の汁が混じって人間の顔のようなものが出来上がりかけていた。更に三日経つと胴体が出来ており、その三日後には小さな少女が出来上がっていた。その夜、夢に再び例の男が現れ、蛇模様の布で少女を丁寧に包んで椰子の木から持ち帰るように、と言った。翌日、アメタは蛇模様の布を持って木に登って、それで少女を慎重に包んで家に持ち帰った。アメタはこの少女にハイヌヴェレ(ココ椰子の枝)と名付けた。ハイヌヴェレはみるみる大きくなり、三日も経つと年頃の娘になっていた。しかも、その排出する便は、中国の陶磁器や銅鑼など みな高価な品であり、父のアメタは大金持になった。

 その頃、タメネ・シワで九夜ぶっ通しで行われるマロ祭りが開催され、九家族はそれに参加した。彼らは九重の螺旋状になって毎夜踊った。踊るときには螺旋の中央に女たちが座って、踊り手たちに清涼剤のシリーの葉とぺテルの実を渡す役をするのが慣例だった。そして、今回のマロ祭りでは、その役をハイヌヴェレが任されていた。

 最初の晩は、何事もなく終わった。けれども二日目の晩、ハイヌヴェレは踊る人々に清涼剤ではなくサンゴを渡した。誰もがこの綺麗な宝物を喜んで受け取った。三日目の晩には中国の磁器の皿が、四日目にはもっと大きな磁器の皿が、五日目には大きな山刀が、六日目には銅製の素晴らしいシリー入れが、七日目には金の耳環が、八日目には美しい銅鑼がみなに分配された。このように夜毎に宝物は高価なものになっていき、人々はだんだん気味悪く思い始めた。そして集まって相談した。彼らは無限の宝を所持しているハイヌヴェレを不気味がり、かつ嫉妬して、殺してしまうことに決めたのである。

 最後の晩、ハイヌヴェレはやはり清涼剤を配る役で広場の中央に立たされていたが、男たちはそこに深い穴を掘っていた。踊り手たちの作る九重の螺旋の環の一番内側は必ずレシエラ家の者が踊ることになっていたが、レシエラ家の者たちはゆっくり踊りながら だんだんハイヌヴェレを穴の方に押していって、ついにその中に突き落とした。少女の悲鳴はマロの踊りの高い歌声にかき消された。少女の上には土が浴びせかけられ、踊り手たちは踊りながら土を踏み固めた。明け方には踊りは終わり、人々は家に帰った。

 朝になっても娘が帰らなかったので、アメタは彼女の身に異変が起きたことを悟った。彼は占いに使う九つの潅木の棒を使って、娘がタメネ・シワ舞踊広場で殺されたことを突き止め、例のココ椰子から九条の葉肋を取って広場に行った。葉肋を一本ずつ広場の外側から地面に挿していって、中央を挿したとき、引き抜いたそれにはハイヌヴェレの血と髪の毛がこびり付いていた。アメタは死体を掘り出し、それを細かく刻んであちこちに埋めた。すると、そこから様々な種類の芋が生え、以来人々は芋を主食とするようになった。

 けれども、アメタはハイヌヴェレの両腕だけは埋めずに、女神ムルア・サテネのところに持っていった。アメタはハイヌヴェレを殺した人々を呪い、女神は人殺しを怒った。女神はタメネ・シワ広場に九つの螺旋の大きな門を作り、自分は門の奥の中央の一本の大木の上に座って、切り取られたハイヌヴェレの腕を両手に持っていた。そして門の前に人々をみな集めて言った。

「お前たちが人殺しをしたので、私はもうここには住みたくない。私は今日、お前たちから離れる。お前たちが人間のままでいたいのなら、この門を通って私の方へ来るがいい。来ない者は人間以外のものになってしまうよ」

 それを聞いて人々はみな螺旋の門をくぐろうとしたが、誰もが通れたわけではなかった。通れなかった者は動物や精霊に変わった。また、通れた者は女神の座っている大木の左右どちらかを通って奥へ行ったが、女神は通り過ぎる者を片っ端からハイヌヴェレの片腕で殴った。木の左側を通り過ぎた者は五本の木の幹を跳び越えてパタリマ(五つの人たち)と呼ばれる島東部の住民になり、右側を通り過ぎた者は九本の木の幹を跳び越えてパタシワ(九つの人たち)と呼ばれる島西部の住民になった。この神話を伝えるヴェマーレ族はパタシワである。

 さて、女神は残った人々に言った。

「私は今日にもお前たちから別れていく。もはや私の姿を地上で見ることはないだろう。おまえたちは死んで初めて私に会える。しかし、その場合でも辛い旅路を辿らねばならないのだよ」

 こうして女神は姿を消し、それ以来、島の西南部のサラフアという霊山に精霊として住んでいる。この山に行くには八つの山を越えねばならず、この八つの山々には八人のニトゥ精霊が住んでいるという。



参考文献
『神話の話』 大林太良著 学術文庫 1979.

このように、特別な力を持つ女が殺され、その死体から農作物が生まれた、とする話を「ハイヌレヴェ神話」と総称します。
おもに、食物の起源を説明する話となっています。
日本海側に伝わる、「瓜子姫の死体がキュウリになった」や、各地の「あまのじゃくの血がとびちったため、ソバ(かや)の根は赤い」ということからして、「瓜子姫」もハイヌレヴェ神話の一種では? という説もあります。

このように、海外にも「瓜子姫」に似た話は数多くあります。「瓜子姫」は、海をわたってきたいろいろなお話の要素がミックスされた、とても国際的な昔話なのかもしれませんね。

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