瓜子姫か瓜姫か?
口承伝承というものは、地方によって多少の違いがでるのが普通です。 「主人公の名前」も例外ではなく、 たとえば「桃太郎」を「桃ノ子太郎」とする地方があったり、「かぐや姫」を「竹姫」とする地方があるようなものです。 われらが(?)瓜子姫も例外ではなく、主なものでも ・瓜姫(うりひめ) ・瓜姫子(うりひめこ) ・瓜子姫子(うりこひめこ) ・瓜子織姫(うりこおりひめ) ・瓜姫御寮(うりひめごりょう) ・瓜娘(うりむすめ) などといったところです。 話のバージョンと同様、非常に多彩です。 「瓜子姫子」なんて、ずいぶん丁寧、というかしつこい、というか……。 さて、この中でもっともスタンダードな名前が「瓜子姫」なのですが、 実は地方に残っている話は「瓜姫」と名づけられている話のほうが多く、物語のタイトルも「瓜姫」(あるいは「瓜姫とあまのじゃく」)となっているもののほうが多いのです。 また、文章としてのこっている最古のものも江戸時代初期に書かれた「御伽草紙」の「瓜姫物語」であり、そこでも「瓜姫」です。 そのことから、すくなくとも江戸時代前半は「瓜子姫」よりも「瓜姫」のほうがスタンダードであったのではないか、とも考えられます。 しかし、現在は「瓜子姫」のほうが主流です。 書籍になったものでも、「うりこひめ」のほうが多いです。(もちろん、「うりひめ」もあります) それは、なぜでしょうか? 正確な資料はないので、とりあえず私の仮説を書いておきます。 それは 「瓜姫」より「瓜子姫」のほうが響きがよいから というものです。 発音してみてください。 「うりひめ」=urihime では、「ri」と「hi」と、iの母音がふたつならんでしまい、少々発音しにくくなります。 「うりこひめ」=urikohime とすれば、 iの間に、「ko」という「o」の母音が入り、発音がしやすくなるほか、語感がやわらかくなります。 言い比べてください。 うりひめ うりこひめ うりひめ うりこひめ やはり、「うりこひめ」のほうが通りがいいのではないでしょうか? それが、私の仮説です。 ほかにご意見のあるかたがいらっしゃっれば、ぜひお聞かせください。 |