瓜子姫 キャラクターの肉付け
瓜子姫影の薄い主役をどうするか? 瓜子姫が普及しない原因のひとつが、 「主人公瓜子姫に魅力がない」という点が挙げられるでしょう。 「瓜から生まれた」「機織が得意」「美しい」という以外、これといった設定がありません。 「瓜から生まれた」というのはたしかに個性的ですが、その後の展開にはあまり関係ありません。 「機織が上手」というのも、機織を知らない現代の子どもにはわかりづらいところ。 「美しい」というのは、物語世界では珍しくありません。まあ、それは絵師のかたにがんばってもらうしかないですが。 次に、性格。 性格に関しては、はっきりとした描写がありません。なんとなく「世間知らず」「騙されやすい」「お人よし」といったものは垣間見せますが、あまり魅力的ではないですね。 それどころか、「あんなにあんなにあっさり騙されるあんてバカじゃあるまいか」と思う子どものほうが多いのではないでしょうか? そして、一番大きいのは なんの活躍もしない という点です。 あまのじゃくの悪事の露見も「カラスの知らせ」「自滅」「偶然」と、瓜子姫自身はなにもしていません。 つまり、 「あっさりと騙されピンチになり、自分ではなにもしないのに助けてもらう」という、他力本願な解決ばかりなのです。 結局のところ、瓜子姫は地味で、バカで、他力本願、という現代の子どもたちにはあまり好かれないキャラクターであるわけです。 もともと、瓜子姫はあっさりと殺される展開なので、活躍がないのはあたりまえ。それを、瓜子姫が助かるように変更しても、なにも改定をしなかったのが、そもそもの原因でしょうね。 以上のことより、瓜子姫はもっと魅力のあるキャラクターとして肉付けする必要があると考えます。 児童劇団などの「瓜子姫」では、瓜子姫を「明るくおてんばな娘」にしているものも見かけますが、それはあまりにも変えすぎでしょう。 私が考えるに、瓜子姫は ・素直な性格であることをもっと強調するべきだと考えます。 ありえないくらい、すなおで、純真で、お人よしで、ひとを疑うことも憎むことも知らない。 そして、あまのじゃくを許してしまう。 そんな性格にすべきだと思います。 どんなに脚色しても、瓜子姫自身の力であまのじゃくの悪事を暴くことは難しいため、悪事の露見自体には関わらなくていいとでしょう。むしろ、その後、まわりがあまのじゃくを成敗しようとするのをとめる、というシーンを付け加えるのがいいと思うのです。 自分を酷い目にあわせたあまのじゃくを許す。そこまで来てようやく 「簡単に騙されるバカでお人よし」から「ひとを憎もうとしない優しい性格」に読者の認識も変わり、「瓜子姫は優しい子」という印象を与えることができる、と考えるのです。 |
あまのじゃく性別は? 動機は? 瓜子姫の適役として登場するのがこの「あまのじゃく」という妖怪。山姥、狼、村の嫌われ者などの場合もありますが、一番有名で一番登場している話が多いのもあまのじゃくなので、瓜子姫の適役にはこのあまのじゃくが適任でしょう。 あまのじゃくって何者? 漢字で書くと天邪鬼。 人に逆らい、意地悪をすることが大好きな悪い鬼、として紹介されている場合が多いようです。 ものによっては、瓜子姫をおぶっていこうとするものもあるが、そのとき瓜子姫が「あんたの背中にはトゲがあるからいや」という場合もあります。 さて、鬼であるのはいいとして、このあまのじゃく 性別は男なのでしょうか? それとも女なのでしょうか? 私は あまのじゃくは女性のほうがいいと考えます。 男性的な性格として紹介されていることが多いようですが、もともとは「天探女(あまのざくめ)」という仏教説話の妖怪で、女性的な性質をもった妖怪だったらしいので、女性とすること自体問題はありません。 それに、男性にしてしまうと 「ひとりで留守番をしている少女のもとに悪い男がやってきて娘を連れ出す。娘に暴力を振るって意識を失わせ、着物を剥ぎ取り木に縛る」 となってしまいます。 これでは、子どもによませるには抵抗がある保護者のかたも多いでしょう。 同姓にしておけば、まだそれくらいがソフトになります。 また、瓜子姫に化けるのも女性であったほうが無理が少ないでしょう。 絵本によっては、ものすごいゴツイ天邪鬼が瓜子姫に化けていて だれが見ても「無理だろ!」というものもありますが、これなら問題ありません。 見た目に関しては、「妖術で化ける」という脚色もありだと思います。 動機は? あまのじゃくは瓜子姫になりかわります。 なぜ、そのようなことをしたのでしょう? 女性あまのじゃくは、多くの場合「瓜子姫になりかわってお嫁に行きたい、あるいはおじいさんおばあさんに可愛がってもらいたい」という動機であることが多いのです。 しかし、この動機では「なぜ、瓜子姫にとどめをささないのか」という疑問が残ります。 この動機はもともと死亡型のものであるため、無理が出るのは当然なのです。 ここは、「瓜子姫に嫉妬して、意地悪しようとした」といった程度がいいでしょう。 私が勧める失神型は 「あまのじゃくは瓜子姫をからかうだけのつもりだった。しかし、やりすぎて瓜子姫が気絶してしまったため、入れ替わりを思いついた」 という無理の少ない展開にもっていくことが可能であります。 「さいご」は? もともとあまのじゃくは最期、殺されます。 殺され方も、「打ち首」「滅多打ち」「バラバラ」「車裂」とバラエティ豊かで、流れ出た大量の血でそばやかやの根が染まった、というオチの話も多いようです。(このオチは、「そばやかやの根が赤いことを知らない。身近でない」いまの子どもには意味がないでしょうね) 瓜子姫が殺されない話と同様、悪者のあまのじゃくも殺されない話があります。その場合は、懲らしめられて山に逃げ帰る、という話が多いようです。 上の項目で主張したように、「あまのじゃくは殺されそうになるが、瓜子姫に救われる」という展開がいいと思います。ただ。「その後仲良くなりました」というのはやりすぎだと思うので、「その後、懲りて悪さはしなくなりました」程度がちょうどいいと思います。 |