名作アニメ絵本シリーズ69うりこひめ

永岡書店1992.8月

平田昭吾 文・大野豊 絵


いままでなんどか紹介した絵本です。
内容はなんども紹介したので、今回は
主に挿絵とそのつっこみに力点をおきたいと考えます。




書店の回転ラックなどでおなじみの絵本。
このシリーズ、「名作アニメ絵本シリーズ」と「アニメ昔ばなしシリーズ」のふたつがあるにもかかわらず、

うりこひめはなぜか「名作」のほうに入っています。
世界昔話と一緒になっているわけです。
「うりこひめは世界的な話」という解釈なのでしょうか?



おばあさんが川で洗濯をしていると瓜が流れてきて、それを割ると女の子が出てきます。
ふたりは、その子に「うりこひめ」となまえをつけて大切に育てます。
うりこひめはおおきくなるととても美しいむすめになりました

とても美しいうりこひめ

(7ページより 引用)

まあ、それなりにかわいいとは思いますが。
そこまで言うほど美しいかな?
しかし、おじいさんおばあさんのように粘土をこねたような顔のひとばかりのこの世界では、たぶん猛烈に美しいのでしょう。
その美しいうりこひめは、金持ちに見初められ、お嫁に行くことに。
お嫁入りに着物を買うため、おじいさんとおばあさんは街へ買い物に。
「あまのじゃくという悪い鬼に気をつけろ」
というふたりに、
ひとに逆らうのが大好きなあまのじゃくを「まあ、おもしろい」と、まったく緊張感なしのうりこひめ。
こんな子に、留守番させて大丈夫か?
と読者は誰もが不安になります。

機を織るうりこひめ

(16ページより引用)
「♪トンカラはたをおりましょう きれいなぬのをつくりましょ」
と工夫のない歌を唄いながら、なぜかまっくらな中で機をおるうりこひめ。
その後、あまのじゃくがやってきて、
うりこひめはあっさりとだまされ
多くの読者の予想通り、戸を開けてしまいました。

あまのじゃくに泣かされるうりこひめ

(24ページより引用)

いつも反対のことばかり言っているあまのじゃくは、美しいうりこひめの顔をみてつい「なんてきたないかおだろう」と言ってしまいます。
機織と顔の良さ意外になんのとりえもない?うりこひめは泣き出します。
しかし、「おいしいかきを取りに行こう」というあまのじゃくにまるめこまれ、いっしょにかきとりに。
機嫌直るのはやすぎ!
そして、なんで簡単に信用するの!

かきの木につくと、あまのじゃくは木に登り、読書の予想どおり、自分ばかりが食べてうりこひめにはくれません。
うりこひめが「わたしにもとってちょうだいな」と頼むと、固い青柿を投げつけ

うりこひめのあたまに命中!

(31ページより引用)

こめかみにあたっていますね。
エフェクトからして、かなりの衝撃みたい。
うりこひめ、大丈夫か?

あまのじゃくの剛速球は150キロ(推測)
まともにくらい、無事なはずはありません。

うりこひめはあっさりと気をうしないます。

気を失ったうりこひめをみおろすあまのじゃく

(32ページより引用)

読者は、「あまのじゃくはいじわるな鬼」だと思っていました。しかし、並みの意地悪さではありません。
どうです、この顔。
単なるいたずらっ子、てきな範疇ではありません。
本格的な悪人です。
しかも、
「ひひひ、うまくあたったぞ!」
と言っていることからして、
最初からりこひめのあたまに命中させて気絶させる
という計画だったのは間違いありません。
なんともおそろしい!



こうして、おじいさんとおばあさんの言いつけを破ったうりこひめは、
気を失う
という罰を受けたのです。
とりあえず「死」という概念のないこのシリーズでは、
最大に酷い目に遭った、というわけです。
しかも、主人公なのにもかかわらず。
しかも、人魚姫や白雪姫といったおひめさまが「毒」や「薬」で倒れているのに、
頭を直接やられる、という主人公の、おひめさまとは思えないやられかた。
なんだか、罰としては重いような気もしますが。
ちびっ子は
「留守番中に知らない人をいれちゃだめだ。気絶させられる」
ということは痛いくらい理解したでしょう。


さあ、はたしてうりこひめは助かるのか?
ここまで、「頭の弱い子」とう印象しか与えなかった主人公は汚名を晴らせるのか?

次回に続く

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