講談社の絵本 132
「うりこ姫」

 大日本雄弁講談社 昭和30(1955)年 3月発行

文・平井芳夫 絵・石井健之


大日本雄弁講談社……。

このネーミングだけで、時代を感じます。

戦前から続いていた人気のシリーズで、当時の一流画家による挿絵が魅力的でした。




内容は典型的な「生存型」です。
実は、この時まで
単独の絵本としての「瓜子姫」は、ほとんど発行されていませんでした!
戦前までは、昔話集のひとつのお話として収録されることがほとんどだったのです。

白黒で、挿絵の少なかった児童書に比べて、美しいカラー挿絵は印象的であったと思われます。
この年代、他にも「瓜子姫」の絵本はありますが、人気・知名度などはやはり「講談社の絵本」が頭ひとつうえで、「瓜子姫」という昔話を知らしめるのに、大きな役割があったと思われます。

なお、
「瓜子姫の嫁入りが決まり、その準備のために爺婆が出かける。そのすきにあまのじゃくが来る」
というのを明確に書いたのは、児童書としてはどうやらこれがはいしのようです。
それまでは、「嫁入りのモチーフそのものがない」「嫁入りが決まるのはあまのじゃくが入れ替わった後。爺婆が留守にするのは嫁入りとは無関係」
というものばかりでした。

もしかしたら、「瓜子姫=嫁入りが必ずある」というイメージを作るのに貢献したのがこの絵本かもしれません。

とはいえ、講談社の絵本シリーズの終わりに近い132番目ということもってか、そこまでベストセラーになったわけではないようですね。
近年「子供に良い絵本を」ということで、「講談社の絵本」シリーズのうちいくつかが復刊されていますが、「うりこ姫」は復刊の気配はありませんwww。

 

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