全日本家庭教育研究会
こころの文庫
「うりひめ」


1982年(昭和57年)「ポピー 小学一年生」一月号 付録
平林英子・作 三国よしお・絵 棟方志功・表紙装丁



「ポピー」
進研ゼミなどと並んで有名な児童向け通信教育雑誌です。

そういえば、小さいころやっていたな……という方も多いのではないでしょうか?

ポピーには「こころの文庫」という付録冊子があります。
それで、学年に合わせたお話を毎月読むことができました。

今回紹介するのは、そのポピーの「こころの文庫」より

 


「うりひめ」!

ちなみに、何年におきかの割合で付録として利用されていたようです。
表紙も新装され、新しい物はこうなっています。

 


棟方志功デザインの表紙ではなくなっていますね。

作者は平林英子。
平林英子と聞いて、ピンとくるひとは少ないと思いますが、賞もとっている作家で、芥川賞候補にもなった中谷孝雄の奥さんです。
といっても、やはりピンとこないですよねwww。

「檸檬」などを書き、若くしてこの世を去った梶井基次郎。その梶井の仲間であり、「檸檬」を掲載した同人誌「青空」のメンバーだった、と言うとわかりやすいかもしれません。
当時の梶井に関する証言をエッセイなどで残しており、梶井やその仲間の人となりを知る貴重な資料となっています。
現在では、作家としてよりも、梶井基次郎研究の重要な資料の提供者、としての方が有名かもしれません。
ちなみに、平林は大変な長寿で白寿(九十九歳)まで生きられたそうです。

ポピーを発刊している「全日本家庭教育研究会」の創業者と関わりがあり、その縁でこころの文庫を書いていたようですね。
この「うりひめ」以外にも多数の作品をこころの文庫に書いています。

さて、内容に移りましょう。
基本的なあらすじは、関敬吾が『日本昔話集成』で典型話紹介した秋田の型です。
『日本昔話集成』は当時、もっとも信頼できる学術的な資料であったため、平林がこれを参考にしたのは不思議ではありません。
『日本昔話集成』の典型話では、姫(『集成』では「うりひめこ」)は、あまのじゃくに木から落とされて殺されてしまうのですが……。

 

ここでは、姫は死亡せず、気絶しただけにとどまっています。
そして、上記画像を見た多くのひとが思ったであろうこと。
「え、なに? わるい女、って?」
このお話では、あまのじゃくではなく「わるい女」が姫の敵となっています。

わるい女は姫と入れ替わるものの

 

あっさりと見破られ

 

諭されて改心します

 

後半部分は、『集成』ははじめ伝統的な昔話には見られないので、平林の創作です。
なぜ、このような改定をしたのか、というと

 

というような理由のようですね。
なぜ、「瓜子姫」系統の話は人気がないのか、ということを考察した貴重なものでもあります。

ただ、民俗学的な面からみると重要なモチーフを削ったわけであり、
作品としても、主役である姫がほとんど活躍せず、わるい女の悪事・改心が中心となっている……などの欠点を見られます。
しかし、「昔話をどう現代風にアレンジするか?」という問題に立ち向かった作品として、注目すべきものはあると思いますね。

現在、こころの文庫は大幅に見直しされたようで新しいポピーに付録としてつくのかは不明です。
たまにオークションなどで出るので、欲しい人がそこを狙ってみてください。


 

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