あまのじゃくとは???

 多くの「瓜子姫」の類話で、姫の敵役となる「あまのじゃく」。
そもそも、なぜあまのじゃくが敵役なのでしょう?
いえ、それ以前にあまのじゃくとは何者なのでしょうか?


あまのじゃくの起源

有力な説は、あまのじゃくの起源は日本神話に登場するアマノサグメ(天探女)であるというものです。
アマノサグメとは……


地上世界を支配せんとする高天原は、その尖兵としてアメワカヒコという神を降臨させます。
しかし、アメワカヒコは地上の支配者、オオクニヌシに懐柔され、彼女の娘と結婚してそのまま地上に居ついてしまいます。
アメワカヒコの報告がないことをいぶかしく思った高天原の神は、雉のナキメを使いとして送り込みます。
その雉をいち早く見つけたのがアマノサグメ。
アメワカヒコは、アマノサグメの口車に乗せられ、雉を射殺してしまいます。
その矢は雉を貫いて高天原に。それを拾ったタカミムスヒ(タカギの神)は、「アメワカヒコが邪心を持っているならアメワカヒコに当たれ」
と、矢を地上に投げ下ろします。
矢は地上で眠っていたアメワカヒコに当たり、彼はそのまま死亡します。

(なお、おなじ日本神話でも『古事記』と『日本書紀』ではいろいろと異なります。例えば、『古事記』では、アマノサグメは雉を殺すように勧めますが、『日本書紀』では、雉がいるということを伝えるだけ、など。このあたりは神話の専門サイトを見てください(手抜き))

このエピソードから、ひとに邪心を起こさせるといったイメージにつながっていったと言われています。
さて、これだけなら「単なる悪い女」だけで終わりです。
しかし、どうもそれだけではないようなのです。

そもそも、アメワカヒコが死んだときは、丁度、新嘗の儀式の最中です。新嘗は豊穣を祈る農業にとっては重要な儀式で、アメワカヒコがその最中に死んだ、ということは「アメワカヒコの死によって、作物の豊穣が約束される」ともとれるのです。
つまり、アメワカヒコはある意味「人身御供」であり、「ハイヌヴェレ神話」などとも繋がってくるわけです。

さて、「ハイヌヴェレ神話」系統では、「殺される神」=作物の象徴、とともに、「神を殺すもの」=作物を刈る者の象徴、がセットとなることがほとんどです。
私は、その「作物を刈る者」こそが、アマノサグメだったのでは? と思っています。
『摂津国風土記』(逸文)では、アメワカヒコとアマノサグメは一緒に天から降りてきたとされており、ともに行動することを運命づけられた、セットとなる神とも考えられます。(もっとも、『摂津国風土記』逸文自体の出自が怪しい、という意見もありますけどね)

また、アマノサグメから発生したあまのじゃくにもに「刈る者」の性格があることを語るお話が存在します。


むかし、黍や粟などの穀物は根元まで実ってい。しかし、あまのじゃくが根元の実を扱いてしまったため、根元には生えなくなってしまった。
黍や粟の根元が赤いのは、あまのじゃくが扱くときに手を切って血を流したから、それが染み込んだのだ。


ここであまのじゃくは作物を「採る」行為を行っており、そのことから、あまのじゃくは「刈る者」と考えることができるわけです。
そして、瓜子姫は、ハイヌヴェレ神話の「殺される神」にあたるという説が有力です。(「瓜子姫の民話と焼畑農耕文化」『現代のエスプリ臨時増刊号 日本人の原点1』 1978年 などを参照)


ということは、あまのじゃくは単なる敵ではなく、
「作物を刈る者=豊穣を受け取る者」であり、「大地に豊穣をもたらすために神を殺す」役目を背負っている、というここになります。

あれ、でも……?
ならば、どうしてあまのじゃくが殺される話が多いの?
それに、姫が殺される神なら、はハイヌヴェレ神話の名残、「血が作物を染める」というのは、姫の血でないとおかしいよね?
でも、現在はほとんどがあまのじゃくの血で作物が染まっている。あまのじゃくが穀物を扱く話でもそうだし……。


と、新たな謎が生まれますが……。
それに関してはこちら


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