真の主役? あまのじゃく

 瓜子姫が、主人公にあるまじき没個性的で影が薄い主人公であることは何回も述べました。
「世界名作劇場」でもっとも影の薄い主人公と言われるルーシー(『南の虹のルーシー』)でさえ、瓜子姫よりよっぽどキャラが立っていました。

だからこそ、「瓜子姫とあまのじゃく」と、敵役とタイトルを分け合い、場合によっては「あまのじゃくと瓜子姫」と表記されるような屈辱を味わっているのです。
さて、感情論は抜きにして、この「瓜子姫とあまのじゃく」というタイトルを見てみます。

タイトルのつけかたとしては非常に正しいと思われます。
なぜなら、瓜子姫が死亡してしまう話の場合、瓜子姫は話の途中で退場し、後はあまのじゃくの話となります。
縛られ型や失神型でも後半は主にあまのじゃくの活躍であり、瓜子姫は登場の機会もかなり少なくなります。
つまり、物語後半は事実上あまのじゃくは主人公であり、かえって「瓜子姫」だけを単独の主人公としてタイトルにすること自体が間違いともいえます。

さらに、瓜子姫ではなくあまのじゃくの視点から物語をすすめてみても、十分成立します。
実際、村のむすめが妖怪にさらわれたり殺されたりする瓜子姫の類話も存在し、そこでは妖怪が一応の主人公として扱われています。

むしろ、瓜子姫を主人公とするほうが、不自然なのかもしれません。
瓜から生まれた、というくだりがなければただの小娘ですし。

あまのじゃくこそ、この物語の真の主役であるのかもしれません。
この妖怪のほうが、主人公の姫よりも目立つ、というのも、瓜子姫の話が普及しない原因のひとつかもしれませんね。

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