むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
 おじいさんは山へしばかりにおばあさんは川へ洗濯にいきました。
 おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな瓜がドンブラコと流れてきました。
 「まあ、大きな瓜だこと」
 おばあさんはその瓜をもってかえり、おじいさんが帰ってくるのをまって、それを切りました。
 すると、うりのなかからかわいい女の子の赤ちゃんが出てきました。
 こどものいないふたりは大喜びで、その女の子を瓜子姫、と名づけて大切に育てました。
 瓜子姫は大きくなると、とても美しく、また機織のうまい娘になりました。
 ある日、おじいさんとおばあさんは町へ買い物にいくことになりました。
 「瓜子姫、ちゃんとお留守番をしていてね。だれが来ても、家に入れてはダメよ」
 「はい。わかったわ」
 瓜子姫は笑顔でふたりを見送りました

 そのころ、山にはあまのじゃくという鬼の女の子がすんでいました。ひとを騙したり、ひとのいうことに逆らったりするのが大好きなひねくれものの鬼でした。
 あまのじゃくは、瓜子姫のうわさをきいていました。そして、みんなが瓜子姫をほめるので、少々にくらしく思っていました。
「よし、ちょっとその瓜子姫をからかってやろう」と、あまのじゃくは瓜子姫の家へ向かいました

 瓜子姫が機を織っていると、戸を叩く音がしました。
 「だれかしら?」
 瓜子姫が窓から覗いてみると、鬼の子です。
 「瓜子姫、戸を開けて」
 「だめよ。誰も入れてはいけない、といわれているもの」
 「そんなこといわないで開けて。ちょっとでいいから」
 「でも……」
 「そうだ。いっしょに、柿をとりに行きましょう。甘い柿がたくさんなっているのよ」
 「ほんとう?」
 「ええ、とってもおいしいのよ」
 最初は渋っていた瓜子姫も、柿が食べたくなってきて、とうとう戸を開けてしまいました。
 「さあ、柿を取りに行きましょう」
 「ええ、行きましょう」
 あまのじゃくは、瓜子姫の手を引いて連れ出しました。
 (おじいさんおばあさんはあんなことをいっていたけど、あまのじゃくさんはいいひとなのね)
 瓜子姫はすっかりだまされていました。



 柿の木につくと、あまのじゃくは木にのぼって柿を食べ始めました。
 瓜子姫にはぜんぜんくれません。
 「わたしにもとって」
 と瓜子姫がたのむと、
 種やら、食べかけやらを投げつけます。
 「ねえ、ちゃんとしたのをとって。赤く熟したのをとって」
 「わかったよ」
 ひとの言うことに逆らうのが大好きなあまのじゃくは、青くて固い柿をもぎ取ると、
 「ほら、おいしい柿だよ!」
 と投げつけました。
 それが瓜子姫の頭にあたりました。
 「きゃああ!」
 瓜子姫は、ばったりと倒れてしまいました。
 「ごめんごめん。大丈夫か、瓜子姫?」
 しかし、瓜子姫は返事をしません。倒れたまま、ピクリとも動きません。
 「どうしたんだい? 瓜子姫」
 あまのじゃくは、木からおりて、瓜子姫のそばによりました。
 瓜子姫は、しっかりと目を閉じ、気をうしなっていました。


 「おやおや、これはおもしろいことになったね」
 あまのじゃくはニヤリ、と笑いました。
 「そうだ。せっかくだから、瓜子姫に化けてみよう」
 あまのじゃくは、瓜子姫の着物を脱がせると、自分の汚い着物と交換しました。
 そして、藤蔓をさがしてきて、それで気をうしなっている瓜子姫を木に縛り付けると、自分は瓜子姫の家へ戻りました。

 あまのじゃくは、化粧をしてうりこひめに化けました。
 しばらくして、おじいさんとおばあさんが帰ってきました。
 「うりこひめや。なんか変わったことはなかったかい?」
 「ええ。なにもなかったわ」
 あまのじゃくは、瓜子姫の声をまねて答えました。
 しばらくすると、誰かが戸を叩きました。おじいさんが開けてみると、お侍がいます。
 「ここの娘は機織が上手だときいた。殿様が、ぜひ城で働いて欲しいとおっしゃるのだ」
 と言います。
 「しめしめ。お城でいい暮らしができるぞ」
 あまのじゃくは大喜びで、外で待っていたかごにのりました。おじいさんも見送りについていきます。
 途中で、分かれ道にでました。
 「柿の木山と、梨の木山、どちらを行くかね?」
 柿の木山へ進むと、瓜子姫を縛った木の前をとおります。あまのじゃくは梨の木山へ行くようたのもうとしましたが、いつも反対のことを言うくせでつい
 「柿の木山へいってください」
 と頼んでしまいました。



 そのころ、瓜子姫はようやく意識をとりもどしました。
 「う〜ん、う〜ん」
 なんとか蔓をほどこうとがんばりましたが、きつくしばられていて身動きひとつできません。
 「だれか……助けて……」
 瓜子姫は泣き出しました。



 すると、遠くからたくさんのひとが近づいてきます。
 しかも、先頭にいるのはおじいさんではありませんか。
 「おじいさん、助けて! わたしはあまのじゃくに縛られたのよ!」
 と叫びました。
 「さて、おまえは偽者だな」
 あまのじゃくはかごから引きずり出され、化けの皮を剥がされました。
 「悪い鬼だ。こうしてくれる」
 侍は刀を抜いて、あまのじゃくを切ろうとしました。
 「やめて! そこまでするのはかわいそう!」
 それをとめたのは瓜子姫でした。
 「瓜子姫、悪かったな!」
 あまのじゃくは、そういうと、そのまま山へ逃げ帰っていきました。

 瓜子姫は一度家へ帰り、おばあさんにけがの手当てをしてもらいました。
 頭の傷も幸いたいしたことはありませんでした。
 「瓜子姫、わたしたちの言うことをきかなかったから、こういうことになったんですよ」
 「はい。ごめんなさい」
 瓜子姫は心から反省しました。

 それから数日後、瓜子姫は改めてお城に向かいました。
 お殿様や奥方様に気に入られ、一生幸せにくらしたということです。
 めでたしめでたし

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