江戸時代の瓜子姫

 江戸時代、瓜子姫について書かれた文献が存在します。
『嬉遊笑覧』(きゆうしょうらん)という本で、喜多村信節という人物によって書かれた、江戸の風俗習慣などに関する随筆集です。
 現在でも、岩波文庫に収録されているため、比較的容易に読むことができるでしょう。
 さて、この随筆集の巻之九下に瓜子姫の記事は出てくるのですが、それによると、「瓜子姫(ここでは瓜姫と語られています)という話があり、江戸っ子はこの話を知らない」と書いていることから、原因は不明ですが、少なくとも江戸時代、『瓜子姫』の話は江戸ではあまり知られていない話だった、ということになります。
また、江戸時代日本第二の都市といえば大阪ですが、大島建彦先生による分布図(『日本古典文学全集36 御伽草子』小学館などに収録)によれば、大阪府内で『瓜子姫』の話は採取されていないようです。
 『瓜子姫』がどんなに広い分布していようと、江戸・大阪という巨大都市に伝わっていなかった、ということが現在メジャーになっていない原因と言えるでしょうね。当時、すでに江戸で一般的だった五大昔話(桃太郎、舌切り雀、猿蟹合戦、花咲か爺、かちかち山)は、現在でも定番であり、当時絵本で人気になった「一寸法師」なども、その知名度を現在にまで引き継いでいますから。
 もし、瓜子姫が江戸時代、都市部で知名度のある話しだったら……現代での状況はかなり変わっていたのでしょうね。
今後、なぜ江戸や大阪で広まらなかったのか? という考察や、『嬉遊笑覧』の記事の詳しい紹介などを行いたいと考えています。

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